第47回創作手工芸展が11月8日~15日、東京都美術館で開催され、セルビアのおばあちゃんが制作したキリムが展示されます。
第47回 公募 創作手工芸展
主 催:公益財団法人 日本手工芸作家連合会
日 程:11月8日(土)~15日(土) 9時30分~17時30分(最終日は13時まで)入場は閉館30分前まで
場 所:東京都美術館 ギャラリーC (台東区上野公園8-36)
後 援:文部科学省 東京都 読売新聞社
料 金:入場無料
今回展示されるキリムに関する話は下記をご覧ください。
スラジャさんのキリム
NPO法人ACC・希望の「おばあさんの手」は、援助の手が届きにくいコソボからの国内避難民の女性たちに、民族の伝統的生活文化である手編み、手刺繍、手織りなどの手仕事に勤しむ集まりを通して、心理社会的効果を目指してセルビア共和国で実施している支援活動です。
作品群の質的向上を目指して、ACCでは女子美術大学の佐久間恭子(さくまゆきこ)教授をお招きし、「おばあさんの手」に参加している女性達を対象に、活動の本拠地であるヴルニャチカ・バニャ市で9月初旬にワークショップを行いました。
その時、参加者の一人、スラジャ・ラドサヴリェヴィッチさんが思い詰めた表情で、自分が持っているキリムを買ってくれないかと話しかけてきました。そのキリムは2002年に亡くなったスラジャさんのお母さん、ネヴェンカ・ステヴィッチさんが作ったものということでした。自らも織りを専門とする手工芸アーティストの佐久間先生は、関心を寄せて購入する意志があることを伝えましたが、コソボでは娘が結婚する時、母親がキリムを作って贈るのが伝統なのだということを、私たちはこの時にはじめて知りました。スラジャさんは、だからこそ、99年に故郷のオビリッチから逃げて来るときにも、このキリムは手離せずにいたのだとも語りました。
「そんな大切なものを、私が買っていいのですか?」と問いかける佐久間先生。
「これを買ってくれれば、今年の冬を越す薪が買えるのです。」と答えるスラジャさん。
スラジャさんにとってそのキリムが単なる織り物以上の言葉に尽くせない意味があること、そしてそれを手離さざるを得ない現在の厳しい生活。それらのすべてが、そこにいた私たち全員の心に伝わりました。
手離すスラジャさんも、日本に持ち帰る佐久間先生も、目が涙でいっぱいになり、頬に流れていました。とても悲しいことでしたが、同時にそれは互いの文化を尊重し合う、人間同士の心がつながる時でもあったように思います。
スラジャさんのキリムは、今回佐久間先生の尽力により、制作者「ネヴェンカ・ステヴィッチさん」の名前とその由来と共に、東京都美術館で展示されることになりました。
多くの方々に見て頂ければと思います。
NPO法人ACC・希望
スラジャさんのキリム